ファックジャパンが聞く
~山浦徹さん~
山浦徹「こういう形にしてほしそうな形っていうのがあるんですよ、その戯曲に」
ほぼ演出をやったことがないファックジャパンが、その不安を吐露し、教えを乞い、さらに
しずかとユキ二人芝居「Equal-イコール-」
の宣伝にもなるという一挙両得企画!
おまけに山浦さんとはこの日が正真正銘初対面!
人間関係まで広まっていくという恐るべきお得さ、
そして、2014年「Equal-イコール-」初演時の貴重なお話もおうかがいできました!
「ニコラ」
山浦 これ坂口は・・・
板の上に虚構がある
山浦 これ(「Equal-イコール-」)ね
「テオ」
山浦 本当もう虚構も虚構で。うん。なのでそれはそれで演劇的だなと思って。だから仕掛けとしては虚構を虚構としてやる。っていうのでそれで「いけるわ」ってふんだんだけど。にしてもやっぱりこれは伝わらないなと思って(笑)
最初のハードルが高いから。
FJ ハッハッハッハ!!
僕が見たものとファックさんが見るものは多分違うと思うな
山浦 角ひろみさんの戯曲
山浦 末満健一の戯曲
というわけでした。
山浦さん、とても貴重なお話をありがとうございました。
映像で見た赤×坂二人芝居「Equal-イコール-」はインタビュー中でも言ってましたが、まったく違和感を感じることなく、インタビュー中に私がアホみたいな感想を述べているように、ストレートパンチやなと思っていました。が、前説で、そういう仕掛けを、仕掛けですよとアピールするわけでもなく、さりげなくまぶし、そのまぶしを前フリにしてさえしていたという演出力!! そして勿論のこと見事に応えた赤星さんと坂口さんの俳優力なのでした。・・・ああ、不安になってきた。あ、それから文中の坂口さんの写真はすみません…「Equal-イコール-」とは違う舞台のあえて違和感がありそうな坂口さんの20周年記念公演「走れメロス」からの宣伝写真を選ばせてもらいました。あれだけ山浦さんはハードルが高いとおっしゃっていましたが、本番の坂口さんの「ニコラ」というセリフには大変にゾクッとさせられました。美しかったです。
ううむ。演出力…俳優力…私は精進します。 ファックジャパン
プロフィール
作家・演出家・俳優 山浦徹
1971年3月9日生まれ、長崎出身。神戸映画祭出品映画「ラブラブROUTE21」警官役で出演。舞台は、化石オートバイ主催公演「スタンプラリー」「プラズマバンド、ワゴン」「桃源郷のスペクター」などに多数の作品で出演だけでなく、作、演出を兼ねている。客演も多く、舞台ピースピット「れみぜやん」、Patch stage「破壊ランナー」「SPECTER」、 伊藤えん魔プロデュース「運命の子供」などで活躍。ABCラジオ戦後70年特別ドラマ「南号作戦最後の輸送船 東城丸」でラジオ出演をした。趣味は音楽制作、音楽鑑賞、特技はギター演奏。ワタナベエンターテインメント所属。化石オートバイ主宰
山浦 赤×坂でやった、
ごまのはえくんの戯曲、
山浦 それはもうちゃんと狙って、あえて同じ動きを悪いけど歩数も揃えてやってくれって言ってやってもらった。
FJ ええええ!
山浦 全然揃えてくれなかったけど(笑)
FJ ハッハッハッハ。
山浦 こうしようと思ったら演出プラン自体はすごい早かった。すごくシンプルやし、この戯曲。虚構と現実とかテーマもわかりやすく書いてあるから。それを2人にどうしてもらうかっていうのはまた別問題で。
FJ 演出のプランか…(頭を抱える)。
山浦 そんな大それたもんじゃないけど(笑)
FJ 山浦さんは自作以外の戯曲を演出されたのはいつからなんですか?
山浦 それこそ赤×坂が最初かな。
FJ やっぱり違いますか、自分の書いてない作品を演出するのは。
山浦 全然ちがう。作・演出するよりもなんなら、楽しい。
FJ そうなんですか!
山浦 作品に向かうから。自分で書いて自分で演出すると、役者と格闘するぐらいで、自分の中の格闘はあるけど作品と格闘することがなくて。他人の戯曲を演出して、よしこう行こうって見つけるのは気持ち良いから、楽しい経験をさせてもらったなって。自分で書いてると素材つくるところから始めるからシームレスにいけるんだけど、
さぁこの材料どうしようっていう楽しみ
があんまりない。
FJ 楽しむか・・・僕今ちょっと不安なんですよ。
山浦 まずそこにお客さんを引き込む為にも一工夫いるなって思って。
だから前説を2人にやってもらって、とりあえず最初はギャグとして見れるようにっていう風に持っていったんです。前説で板の上に実際に2人の肉体があって、喋ってて、それがシームレスに本編に繋がっていってってなると、虚構と現実との混交の仕方とかがよい具合に超えられるなと思って。
じゃあ最初の「ニコラ」「テオ」って言い合うところでちゃんと笑いが起きて、「ああ、笑っていいんだな」っていう空気が客席に出来たんで(笑)、良かったなって。
FJ 稽古は前説ありきでやっていったんですか。
山浦 中盤ぐらいからかな。構造をわかりやすく示す事ができるかなって思って。だからもうちゃんと「ごっこ遊び」として見れるかなって。
何回か稽古やってから最初のオープニングをつくったんかな。
FJ その笑いが前振りにもなってて、後半笑えてたものが段々笑えなくなっていって怖くなってましたね。
山浦 無理やろと(笑)
「坂口のことなんにも配慮してへんやん」
って・・・もうね、どないしたろかなって思いましたね。
FJ そうなんですか。ぼくは映像ですけど作品をみせてもらいまして、違和感の無い直球のストレートプレイやったと思いました。
山浦 でもやっぱり、イケメンの若い子がやるようなものをあの二人がいきなり
※1赤×坂の二人芝居用に元々書いてもらって、
末満健一が書いたこの戯曲、最初来た時、
「全然あてがきとか意識してへんやん」
と思って。
FJ ハッハッハッハッ、書き下ろしなのに。
山浦 そうそう。赤星はまだいけるとして、
山浦 ってやり出すと違和感がすごくて。
それを何でこの二人に書いてきたんか。
だから大分考えましたけどね、どうしようかな思って。
坂口が普通に「ニコラ」とか言ってんの見たら客席がポカーンとなるやろなと。
だから考えたのは、ただ戯曲通りやるのは簡単だけど、
まぁ演劇的にもっとやっていこうと。
FJ ふんふん。
山浦 そもそも板の上に虚構があるっていう、そういう演劇としての本質っていうか、演劇ってそういうもんだなと思うし。あの二人が美少年たちをやるっていうのが
山浦 もう全然違う。
作家性も違うし、それをやらされるって、ひどいなこいつらと思うけど、色んな戯曲できるのはやっぱり楽しい。
FJ 自分の興味のある部分をこの戯曲にみつけていくんですか。
山浦 そうかなぁ・・・・でもね、興味がどうこうよりも、まずこういう形にしてほしそうな形っていうのがあるんですよ、その戯曲に。
こういう風にしてほしそうだなっていう、それをまず探るっていうかな。
だから3つとも全然違う感じの作品になるし。
だから作品に自分のエゴを出そうとは全然思わなくて、
俺っぽくしようとか全然思わないし、思わなくて良いと思う。
その作品を読んで、
どう言う風にして欲しいかって思うのがきっと人それぞれなんだと思う。
あとはその形を出すだけ。
FJ なるほど。
山浦 だから僕が見たものと多分ファックさんが見るものは違うと思うな。
~ここからしばらくファックの悩み相談になるので割愛~
FJ 演出の仕事ってどんな仕事なんですか?
山浦 役者を楽しませるってことかな
FJ ・・・! そうなんですか
山浦 わかんないけどね(笑)
※1 赤×坂
赤星マサノリ×坂口修一 二人芝居
まったくタイプの違う同世代の役者、赤星マサノリと坂口修一がお互いのスタイルに意気投合し、2010年から「赤×坂」として二人芝居で全国ツアーをスタートさせた。これまでに、ごまのはえ作「男亡者の泣きぬるところ」や、角ひろみ作「貧乏ネ申」や、末満健一「Equal-イコール-」。竹内銃一郎作「東京物語」を上演している。